南青山アンティーク通りクリニック

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第四十二話 構造


令和八年六月二日(火曜日)


小中高校生の頃は、現代国語がとても嫌いだった。
偶然に精神科医になったが、文章を避けて通れない領域である。
が、医学の学術的な世界は英語のみ。
英語は直接的な表現が主であるので、お互いに齟齬がなく、心が通じやすい。

外の世界にばかり興味や関心を持って生きてきたが、内の世界にも興味を持ち始めた。
そして、余白を丁寧に扱う大切さを学んだ。
そういう時期に、構造で物を書く人にたくさん出会ってきた自分に気づいた。
余白と構造。
  この二つは、磁石のN極とS極。

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接近し過ぎると互いにはじき合う。

構造に飲み込まれない距離感を探している自分が見える。
意識的には構造化はしていないが、最小限の構造化は無意識にしている。

構造で書く人は、地図を読み、最後の最後まで旅行の計画を完全に練ってから動き出す。
構造で書かずに余白や気配で書く人は、ふらりと一人旅を楽しむ。

構造を大切にする人を見ていると、どこか不安の匂いを感じていた。
だが、気づけば私も似たような地図を握っていた。

檻の中に住みたくない…空は限りなく自由と思っていた。
  檻を見ると揺らしたくなる。
  閉じた構造を見ると開きたくなる。

無意識に構造で書いている自分を見つけてしまう。
その境界は思っていたほど明確ではなかった。
私が握っているのは、皺ひとつない最新のデジタルマップなのか、それとも手垢のついた古地図なのか。  
ふと夕暮れの空を見上げると、そこにある色が徐々に変化して溶け合っていくのが見えた。

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