今から十年も過去の出来事。
当時は、その数年後にコロナ禍がやってくるとは誰も思っていない。
足早に駆け抜けた十年…あまりにも早すぎる。
座席に座るや否や、数分も経たないうちに軽い睡魔に襲われる。
夢の世界へようこそと手招きしている夢先案内人に導かれるままに…。
今いる世界は、夢とは露とも知らず、現実の世界と思い込んでいる。
私の視界には、魑魅魍魎(ちみもうりょう)しか映らない。
色々な魔物が行き来している。
息を殺し、身を潜めるしか、今行う術がない。
怨霊が漂う、邪鬼たちの住む魑魅魍魎の世界を彷徨っていた。
まもなく彼らに見つかり、捕獲された。
結果、魔物の鬼たちに跡形なく粉々に食いちぎられ、完全に食べられたと思った。
彼らの胃袋の中で溶けて消えてなくなったと思った。
その瞬間である…胃液に溶かされているのに、全然不思議に痛みを感じない。
深い眠りから目が覚めた…。
「ここは一体どこ?」
現実の世界に戻っている。
慌てて周囲を見渡したいが、思うように身体をひねることができない。
シートベルトをしているのに気が付く…とても窮屈。
それが身体への刺激となり、脳は少しずつ覚醒し「今、機内?」と今の状況に気付く。
冷静に考えれば、羅生門の世界じゃあるまいし…。
目の前にパーソナルモニターがある。
半分眠っているような状態で、
「今、自分はどこを飛んでいるのだろう?」
タッチパネルでフライトマップを触る。
ようやく自分の位置を把握する…太平洋の上空。
フライトマップのなかでも、何故か、視線は日本列島の方向へ。
そのとき、あるひとつの考えが通り過ぎる。
「もし日本列島が中国大陸(ユーラシア大陸)とつながっていたら…」
知らない人がその話を聞けば、「何を馬鹿なことを考えているのだろう…」と思うかもしれない。
4000, 5000万年前、日本海はなかった。
それは、日本列島という概念が存在しないことを意味する。
大陸とつながっている、
その頃は、マンモスなどが北方から移り住んできた。
もちろんヒトは存在していなかった…氷河期よりずっと以前の話。
モンゴルの侵攻に耐え切れずに、最後に中国の宋王朝は滅亡した。
日本は鎌倉時代。
欧州諸国でさえも、世界制覇を目指すモンゴルの来襲に手を焼いている。
そのモンゴル大帝国が来襲したが、「もし神風が吹かなかったら…」
結果、日本は島国でありながらも、厳密に言えば、完全な単一民族ではないにしても、ほぼ単一民族を維持している。
日本がもし侵略されていたならば、信じられないほどの、大陸から色々な遺伝子がやってきて混り合い、わが国の歴史はどうなっていただろうか?
神風が吹かなかったら、今の私は、もちろん存在しない。
そのかけらすらない。
間違いなく、歴史は大きく塗り替えられていた。
日本人は何かあると、簡単に頭を下げて一歩下がる癖がある。
I’m Sorry…何度も繰り返すこともある。
日本人と比べ、諸外国の人たちはI’m Sorryと言わない。
万一、是非に及ばず、非を認め、I’m Sorryと言えば、死活問題に発展する。
ところが、多くの在日外国人は、まもなく日本文化にシンクロナイズし、I’m Sorryを使うようになる。日本社会に適応するために…。
私の夢の世界ではないが、邪鬼に食べられるようなもの。
魑魅魍魎の世界で生きていく鉄則。
寝首をかかれないように自衛する。
彼らが大陸で生きていくには致し方ない<自然な流れ>のように思う。
それが<攻撃性>という防衛である。
日本で末永く生きていくには<依存性>のハンドリング、諸外国の陸続きの世界で生きていくには、より<攻撃的>に…。
真逆のように見えても、ほぼ同じ。
コインの表の<依存性>、裏の攻撃性という<依存性>のどっちであっても同じ価値の一枚の硬貨に過ぎない。
クリニックで診療をしていると外国人の会話に診察時間を費やすことがある。
が、決して無意味な時間ではない。
基礎となる文化の違いを理解するうえでは欠かせない貴重な時間である。
毎日、診療の中で、さまざまな外国人の文化を体感できる…。
外国に行かなくても、言葉を媒体として彼らの<感覚>が伝わってくる…。
パーソナルモニターのフライトマップで最終確認。
あと数時間で帰国。
そろそろ、頭を国内モードに戻さないとといけない…。
今年の夏は国内線を使って帰省し、そのときに<JET PLANE>の軽やかに流れるようなメロディが流れてきた。