
或る東北地方。
三陸沖に面してリアス式海岸が連なっている。
その岩壁の頂上付近で睨みを利かせる隼(はやぶさ)。
数キロ先まで海上の獲物を探している。

隼は、世界のどこにでも生息する。
猛禽(もうきん)類の肉食鳥。
彼らは、Lock Onできるレベルにまで達すれば、ほぼ確実に獲物を仕留めることができる。
急降下時の最高時速400kmを越える。
世界最高速の生物。
東北新幹線の代名詞としても使われている。

F1マシンは時速400kmに届くかどうか。
東北新幹線の最高速度は約時速300km。
大谷選手のホームランの確信歩きバットフリップでも時速180-200km。
隼は巣を作らない。
都心のタワーマンションの最上階付近のように人工的な場所にも生息している。
賃貸料が発生しない贅沢な所に居を構える。
彼らは、捕獲した餌を嘴に銜(くわ)え、自分の巣に持って帰り、そこで生肉の状態で食べる。
確かに隼の急降下時約400kmは世界最速の生物である。
が、これは重力による加速を利用した速度である。
その速度を生み出すには、高層ビルや岸壁の上方に生息し、急降下することが不可欠。
遥か上方のポジションから、舞い降りてくるイメージ…。
どこで水平飛行に入るかは、私には到底わからない。
が、急降下時の角度が激しければ、隼自身がコンクリートの海面に叩きつけられ、木端微塵になる…海面 上の獲物を捕獲する以前の問題である。
どういう曲線を描き、急降下飛行から水平飛行に入るかは不明。
水平飛行時は、ネット情報によれば、時速170kmであり、この速度でも隼は世界最高速の生物であることに変わりない。
重力を利用した時速400kmが、獲物を捕獲する瞬間の海面すれすれの水平飛行時には170kmまで、すなわち60%前後減速した状態になる。
大谷選手のホームランと同じくらいの放物線のスピードを、頭の中に描けばいいように思う。
あくまでも私の推測であるが…。
二十歳代後半、或る大学病院で300g前後の購入した実験用ラットを、ゲージから一匹ずつ取り出し、首根っこを手でつかまえ暴れないようにして、数秒の間隙を使い、腹部に全身麻酔の注射を打ち眠らせる。そして、ラットの耳の中に固定器具を挿入し、ラット用脳固定装置で動けないようにする。メスを使って頭皮を剥ぎ、頭蓋骨にドリルで穴を開け、ラット解剖図アトラスで知り得た知識を使って、慎重に深さを0.1mm以内誤差の微小単位で、脳内に実験用器材を埋め込む。
実験仕様のオペ。

オペが終わり、ラットが麻酔から覚醒すると毎日餌をやり、飼育しながら実験の渦中に入っていく。
オペ後に飼育が始まるので、一度実験をスタートすれば、その実験が完全に終わるまで、少なくとも数カ月間、一日も休日はない。
何年も無休の日々が続いた。
好ましい結果は得られない。
巨大な冷凍庫の中には、実験が終了したラットの凍結体で一杯。
確か動物慰霊祭が毎年のように行われていた。
その一方、精神科外来、病棟の勤務などの臨床の仕事が待っている。
頭を切り替え、180度違う仕事をやらないといけない。
意味のない無駄なトキは非常に大切であり、決して無駄ではない。
意味のないトキが、実は最も意味のあるトキかもしれない。
しかしながら、結果が出ないと、どうしても意味のない無駄な時期を過ごしたと考えてしまいがち…。
後から振り返れば、長期スパンでトキの流れを読むことができればと思うが、なかなかそうはいかない。

無駄な時間を過ごしているとき、今は我慢の時期と考えることができない。
実がなる前の、<種蒔き>の時期であると頭ではわかっても、心が追い付いて行かない。
最初は誰でも無駄と思えるトキでスタートを切るのが普通。
最初からSuccess Storyはそうそうない。悲運が続いても、最後はHappy Endで終わると理想的…。
最後の最後まで粘らないとHappy Endはそう容易く転がり込んでこない。
その真逆もあるから、人生は<一寸先は闇>で予測不能。
未来が読めない。
今は、休息日がある。
六本木に座席数500を越える、日本で有数のラージスクリーンのなかでの出来事。
眼前には10m前後の巨大スクリーン。

まもなくMission Impossibleが始まる。
スクリーンまで数十mはある。
スマホやテレビとは比較できないほど、フォーカスをかなり前方に持って来れる。
鑑賞しながら眼のストレッチに最高の条件が整っている。
一般に、耳から英語が入り、眼で字幕の日本語訳を見て、すぐに眼を上方に少しずらし、画面を観る…目の微細な上下運動。
眼球運動も兼ねて、しかも「英語の勉強にもなる」心地よい脳刺激
テニスの試合会場なら、観客はラリーのテニス・ボールを眼で追う。
結果、眼の左右運動。それだけではボールを追えないので、顔の横振り運動も引きずられる。
会場の観客の眼球運動、及び顔の横振りを、斜め上方から眺めるのも悪くない。
丹田(腹式)呼吸でお臍の下に重心を置く。肩には一切力が入らないようにセットする。
腹筋のストレッチにもなる。
以上、眼、脳、腹筋のストレッチも兼ねた数時間。
最初は、上映開始時にすべてLock On。
Mission Impossibleのようなアクションの連続であれば、Lock Onにしたつもりでも、知らないうちに解除され、Lock Offになっている。
肩に力が入り、重心が高くなる。
上映中にそのLock Offの状態に気付けば、すぐさまLock Onのやり直し。
リセット。
慣れれば、全然疲れなく、ライブ感覚を楽しめる。