南青山アンティーク通りクリニック

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第二十二話 Brain Jack

令和七年四月二十七日(日曜日)

Black Jack

 今から約半世紀ほど前に、医師免許を持たない天才外科医のマンガ、ブラックジャック(Black Jack) が大流行。
 いかなるオペも冷静沈着にこなす。

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愛読書

 私もその当時、愛読していた。
 ブラックジャックにあこがれて医学部に進学した人も少なくない。
 確か、手塚治虫さんが書いた作品。

Hi Jack(ハイジャック)

 一方、飛行機の乗っ取りは、ハイジャック(Hi Jack)である。
 これに対して、心を自由自在に操る術は洗脳…言い方を変えると、私の造語<Brain Jack>。

入水行動

 人の<入水行動>は、昔から跡を絶たない。
 生物界で言えば、カマキリの<入水行動>がよく知られている。
 カマキリの<入水行動>は生物界の謎のひとつ。

パラサイト

カマキリにパラサイト、すなわち寄生したハリガネムシは、カマキリの行動を支配し、カマキリを水辺に誘導し水死させる。
カマキリを自在に操るハリガネムシは脅威。

謎が解ける

カマキリにパラサイトするハリガネムシはまさしく<Brain Jack>…。
その遺伝子操作の機序が科学的に明らかにされて、<Brain Jack>の謎が解き明かされた。

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遺伝子研究チーム

その中心は、日本を中心とした国際的コラボチーム。
天才の集団と言っても過言ではないように思う。

興味ある方はネットで検索すると出てくる。
数年前の話…。

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賞賛

Splendid…Unbelievable…Incredible…。
賞賛を遥かに超えた研究成果。

遺伝子の垂直伝播と水平伝播

 遺伝と言えば、ほとんどの人が<親から子供へ>と縦のラインを考える。
 すなわち、垂直伝播である。
 ところが、水平伝播もあるから面白い。
 それはパラサイト。
 ハリガネムシがカマキリの脳にパラサイトし、カマキリとハリガネムシの関係が、ある科学誌に発表されるに至った

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食物連鎖

 切り口を食物連鎖の観点に切り替えると、
 カマキリは入水行動で死んでしまうことで、生物界の食物連鎖は維持できる。
 カマキリの運命としか言いようがない。

代償

 死を代償としたとしても、生物界の食物連鎖の安定性を保つ。
 言葉にならない、皮肉な宿命を背負う。
 同様の生物界の現象は珍しくないと思う。

怖い話

 遺伝子操作で<入水行動>に追い込む
 次から次へと生物界の謎が解けていく。
 ひいては心の病の謎が紐解くことができれば…。

心の病

しかしながら、その解明はなかなか大変…一筋縄ではいかない。
簡単ではない。
その解明に一生を捧げる人も大勢いる。

精神薬理学

 われわれ精神科医にはカウンセリングと呼ぶ手法もあるが、生物学的な色彩を帯びれば帯びるほど、<言葉の遊び><言葉のマジック>で治療は全然通用しない。
 到底、及ばない。
 言葉で対処できるならとてもイージー。
 精神薬理学的な手法を活用するしか方法がない。

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内因と外因

 心の病でも心理的要因や環境的要因などの外的な要因が主たる原因の病がある。
 他方、心の病の中には、生物学的な原因や遺伝子の謎を解きほぐさなければ対処できないものも多く、その内因が大きな障壁となっている。

 なかには、両者が複雑に絡み合っている心の病もある。

自在

 確かにカウンセリング的なアプローチも重要であるが、精神薬理学的なScientific薬物治療も大切。
 精神医学の世界で、何かの治療に固執し、偏るのは危険を伴う。
 状況に応じて、二つの武器をいかに使いこなせるか…それがわれわれの仕事であると信じて疑わない。

役割

 われわれ現場の人間は、今使える薬剤で対処するしか術がない。
 それが、私たち精神科医が担うべき<役割>。