南青山アンティーク通りクリニック

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第十八話 Out Of Control & Take My Breath Away

令和七年三月三日(月曜日)

美ヶ原

 標高2000m前後の美ヶ原。
長野県松本市の少し先。
実際は高原でありながら、海原がどこまでも続いているかのように映る。
 見渡す限り、高原が遥か彼方まで広がり、雑踏の都心の閉塞感を取っ払ってくれる。

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 知らないだけであり、素敵な場所は数知れず存在する。

積雪

 登山の好きな知人から、冬の積雪した時期の美ヶ原も素晴らしいと聞く。
 が、今は雪のないシーズン。
 少し肌寒い気もするが、皮膚感覚にはちょうどいい。

迷い道

 カーナビの類はないので、運転席のサイドポケットに常備している地図を片手に、高原を下る脇道を探す。
 初めての土地でも、道に迷うことは滅多になく、土地勘はとても自信があった。
が、その自信が仇になる。
 少しばかりの不安も必要。

急勾配

 美ヶ原から松本市に下る予定であったが、左折する箇所を間違え、間違えるはずのないところで間違った。
 だんだん道が細くなっていく。

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 徐々に怪しげな雰囲気が漂ってくる。

急変

 呑気な気分から急変…。
 あっという間に、急勾配の細い道に引き込まれた。
 どんどん吸い込まれていくのがわかる。

獣道

 フットブレーキが思うように利かないことに気付く。
 サイドブレーキを使うしかない。
 今度こそ、絶体絶命…。
 細道が次第にさらに細くなり、最後は獣道。
 道らしさがない。

半端ない加速

 アクセルは不要。
半端ない加速のみ…操作できない。
制御不能Out Of Control

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左回転

 あれこれ考えている暇は全然ない。
 左手でサイドブレーキを利かしながら、右手で左に思いきりハンドルを切った。
 車は突然に左回転。
 ギリギリで廻り切ることができたと思ったが、そうではなかった。
 林のなかの大きな木に右サイドボディがぶつかった…
 その瞬間、終わった…と思った。

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 衝撃音と同時に記憶が一瞬ぶっ飛んだ。
まもなく車はやっと停止した。

外傷

 不思議なことに身体的な外傷はない。
 エンジンから焦げ臭いが出て、辺り一体がその臭いで充満している。

再起動

 山中に公衆電話はない。
 エンジンはかからないと思ったが、試すしかない。
するとエンジンがかかった…そこまでは覚えている。
 その後の記憶は曖昧。
 どうやって東京に戻ってきたのだろう?

本物の味

 松本市のどこかで本物のおそばを食べ、本物の味を堪能したことは記憶に残っている。

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秋の気配

 夏が終わり、秋に入る頃の話である。
 空港でカーナビ付きのレンタカーを借りた。
 左折のときのみ、注意していればいい。

一枚の紙切れ

 米国の浜辺で一緒にいた知人が、自宅のアドレスを書いた紙切れをくれた。
 午後2時過ぎ。
 別れ際に笑顔で何かぶつぶつ話しかけてくる。
今日午後7時にパーティがあるから来ない…ことはわかった。
 Take Our Breath Away?
 何を言いたいのかよくわからない。
 はっきり分からなくてもいい…まあいいか?
 公園にあるシャワーを浴びてホテルに一度戻る。
 

欧米風の家

 遅刻しないように、少し早めにホテルを出た。
 ところが、思わぬアクシデント。
いい加減な米国のカーナビに四苦八苦。
 時間はかかったが、小高い丘の上に欧米風の家が散在しているのが見えるところまできた。
その家からガンガンのパーティ音が辺り一体に響き渡っている。
ついに探し当てた…。

確信

「ここしかない…」と思って、坂道に車を停車させると彼らが出てくる。
 家族で出迎えてくれる。
 家の中では、Dancingの真っ最中。

ベランダ

 家の中を案内してくれる。
 最後は、とても広いベランダ
 最高に美しい夜景に、Take My Breath Away…。
 手作りのご馳走も今や遅しと待ってくれている。

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意味

 Take Our Breath Awayの意味が今頃になってわかった。
 彼は私に、これを見せたかった!
 この夜景なら私でなくても誰でも、Take My Breath Away。

世界基準

 横浜の<港が見える丘公園>にどこか似ている。
 しかし、今、目のあたりにしている眺めのレベルは、世界基準。

帰り道

 楽しいひとときを過ごせたが、帰り道がわからない。
 とても簡単だよ?と教えてもらうが、余計に困惑してしまう。
 彼らは毎日使っている道順で至ってイージー。
 私には初体験。

再び、暗闇の中へ

 暗闇の中、走り抜けるしかない。

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