南青山アンティーク通りクリニック

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第五話 お帰りやす

エメラルドグリーン

辺り一面が、エメラルドグリーンの海で彩られているところはないようで、意外に多い。
知らないだけ…。

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でも少し違う気がする…知られたくない気持ちも混在している。
人である以上、そういうこともある。

出会い

数学のように計算通りでは楽しくない…。
計算できないほうが、意外性があり、想定できない出会いに感動できる。
 偶然の出会いを心置きなく楽しむ。

南方の海岸

国内の南の方の、或る海岸。

令和五年大晦日。
あと半日で令和五年も終わる。
あっという間の一年。

お帰りなさい

車から降り、
「久しぶり…戻ってきました…」と私が言えば、
ある男性が、言葉を発しないが、笑いながら、いい笑顔で迎えてくれる。
彼といつも一緒にいる女性も、
「お帰りなさい」とあるひとりの女性が素敵な笑顔で、彼の笑顔と、ほぼ同じタイミングで返してくれる。
彼らの言葉と表情がシンクロしている…。

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 バーバルな言葉もいいが、ノンバーバルでも気持ちは十分に伝わってくる。
 戻ってきた甲斐があったというもの。
 彼らが何を言いたいかわかる。

関西

 最近は久しく行っていないが、
 京阪神の定宿であれば、着物姿がとても似合うレセプションが、最高の笑顔で「おかえりやす」と自然な大阪弁で挨拶をしてくれる。

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 標準語で言えば、<お帰りなさい>である。

京都

 京都にも似た言葉があると聞く。
 <おはようおかえりなさい>である。
 早く帰ってきてねという意味らしい。
 同じ京阪神でも、大阪の<おかえりやす>ではない。

最上階の眺め

 最上階からの眺めは格別…。
 しばし、そこで時間を止めてくつろぐ。

 一年に一回あるかないかの、束の間の休息。

 私の場合、観光でうろつくようなことはしないで、滞在するホテルから一歩も外に出ない。
 頭の中の雑音を消し、癒しの時間を作れるかどうか…。

目的

 観光を主たる目的とする人や、言葉のキャッチボールで会話を楽しむ人には、私のような存在は全然面白くない。
 何も言わないし、どこにもいかない…一緒にいてもいなくても同じ…空気のような存在。

 目的がそもそも違うのだから当然。

浜辺

 今は浜辺であり、大阪や京都などの京阪神ではないが、まったく同じ感覚。

 精神的にゆるめることができる場所であるかどうか?
 そこが、もし緊張を強いられるような場所であれば、まったく意味がない。

連絡

 浜辺では、風が吹けば、連絡を取り合わなくても、湧き出すかのように人が集まってくる。
 約束などの面倒臭い作業を省ける。
 言葉は要らない。
 まさしくノンバーバルの世界。

終わり

 一般的に、女性は、何らかの連絡が途絶えると終わったと考える。
 ライン等で、返事が来ないと無視されたと解釈?
 その通り、終わりのこともあるが、心のなかの不安が投影される。

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が、そうでないときもある。

分かりあえない

 とてもマメな男性であればいいが、そうでない場合、分かりあえないこともある。
 不安を溢れんばかり抱えているのが女性であり、そういう女性の気持ちを読めないのが普通の男性。
 不安や緊張がとても強い女性ほど、自分に不安を抱かせない、コントロールしやすい男性の臭いを嗅ぎ分けるのが上手い。

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 優しくて面倒見のいい、男のお子さんを持つ人は、持っていかれる。
 眼に見えない糸で、一本釣り。

眼に見えないリード

 その類の男女が揃ってクリニックにやってくる。
 眼に見えないリードを男性の首につけ、引っ張ってやってくる。
 ときにはその反対もあるから面白い。

おもてなしの裏

 言葉があれば、確かにコミュニケーションが取りやすい。
 裏のある微妙な<おもてなし>重視の言葉は、混乱を招くが、その一方で日本人特有の<おもてなし>は貴重。
 日本人のおもてなしに隠された<嘘の世界>を理解できない欧米人は、そのおもてなしに単純に感動する。

網膜に焼き付ける

 来年の大晦日に、ここに戻って来れるかどうかは不明。
 海辺から見える橋、数キロ先の半島の景色などを忘れないように…。
海上から浜辺に戻り、
ウエットスーツを脱ぎ、帰り支度ができた。

 来年も、いや一年以内に戻ってくるからと約束したいが、できない。

 一年後になれば、身体に滲み込ませた感覚の一部が損なわれ、消えてなくなることがある。​​ 頭の中に焼き付いた景色だけは忘れないようにしたい。

カウントダウン

 昨年の大晦日に引き続き、最上階のバーに行く。  今年は、ピアノの生演奏と女性のシンガーの二人が、そこでカウントダウンするらしい。
 令和六年を迎える数分前から、彼らは演奏しながら、歌いながら、横目でちらちらと時計を眺めている。

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 明日、令和六年の元旦から、未曾有の悲惨な事件が連続して起きることは誰も知り得ない…令和五年の大晦日。