第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
或る知人のひとりから「○▲×誌に新しい長期連載がスタートします…ご覧ください…テーマは■○です」 と突然連絡が入った。
普通の返事では、納得してくれそうもないと瞬時に感じた。
そこで、私なりのブラック・ユーモアに独自の<ひねり>を加えて即答した。
「私は、<孤独>の世界でとても楽しくやっています。<人間らしく>心置きなく楽しんでいます。どこにも逃げることができないように、<見えない首輪(リード)>を付けて、どこまでも自分を追い詰め、ストイックにやっています…」
眩い陽射しを迎えながら、朝を迎える。
毎日、
「もう嫌…今日こそ、クリニックは休診…もう我慢できない…限界…身体が思うように動かない…」
と寝起き直後は嫌な気持ちで溢れかえる。
が、戯言(たわごと)を言っている暇はない…感傷に浸るようでは全然話にならない…。
現実に眼を背けない。
クリニックに駆けこみ、診療のスタンバイOK。
私はAIを使わない。
が、挿絵の担当者にはAIを駆使して、私の文章を視覚的に表現していただいている…。
或る知人は、「AIはとても便利…使わない手はない」と言う。
その通り。
使えるモノを使わない手はない。
しかし、幸いにも今は必要としない。
たとえ老朽化した脳であっても、意外なところで役に立つこともある。
馬鹿と鋏は使いよう…。
綺麗に切れなくてもいい。使い方次第でどうにでもなる…
AIが人間にとって代わるための大きな障壁…。
1)AIは完璧…少しでいいから不完全さを伴う方がいい
2)見かけ上、言葉(Verbal)を自在に操ることはできるかもしれない…が、見かけ上であり、本物ではない。言葉にならない(Non-Verbal)<ノンバーバル>の世界を的確に言語化できるかどうか
3)本物でないと醸し出せない<存在感>を表現できるのか
昨今の学生は、論文作成にAIを駆使し、欠点のない完璧な文章を作ると聞く。
そこに<個性>はない…必然的に<魅力>は存在し得ない。
担当教官の眼をごまかすことができない。
あまりにも小奇麗で、<人間らしい>ミスが全然ない。
完璧すぎる論文が続けば、AIを使ったニセモノと容易にわかる。
あまりにも完璧すぎる人に近寄るのは怖い。
欠点のひとつくらい、誰でも持っているのが普通。
人間であれば、欠点がないと<人間らしさ>がないと言いたくなる。
診察にやってくる人たちは不器用で人づきあいが上手でない人が少なくない。
AIのような人がやって来ると対処に困る。
<人間らしい>不完全さは、心の緊張を解き放ち、精神的に穏やかにする作用を秘めている…。
人間は<喪失>を感じ、結果<孤独>に陥る。
AIは、人間が日常生活で感じる<喪失>、<孤独>、<悲哀>などの一連の心理現象を、表面上は言葉(Verbal)という道具を駆使し、容易く表現できても、それは単なる上辺にしか過ぎない。
それゆえ、AIは、<人間らしい>ノン・バーバル(Non-Verbal)の世界の本質を描くことが出来ないと思う。
誰でも無意識の世界を持っている。
意識と無意識の世界の判別は難しい…。
心理的に錯綜した状態を完全に読み切ることは、極めて難しい。
もしAIが人の心を完全に言語化して、完璧に読み切ることができれば、それは<奇跡>としか言いようがない。
そういう<人間らしい>感情をすべて抑圧し、一切表現しない人もいれば、少しのことで大騒ぎをする人もいる。
どちらも周囲の人間は振り回される…。
葛藤(Conflict)の大きさが問題ではない。聞こえるかどうかの微かな葛藤(Conflict)であっても、いかなる奏で方をするかを俯瞰する。
精神科医冥利に尽きる。
が、進歩の跡がない…それどころか、後退している。
周囲からすれば葛藤(Conflict)に満ち溢れているように見えても「私には葛藤(Conflict)などはない…何を言っているの、理解できない」と反論する人が意外に多い。
その一方で、「どうして自分の心の気持ちをわかってくれないの…」と溢れんばかりの葛藤(Conflict)に気付かない鈍感な人たちに、激しく怒りをぶつける人もいる。
ノン・バーバル(Non-Verbal)の<阿吽>の世界を教え込むのは思った以上に大変と言わざるを得ない…。
見せかけのフェイクな言葉は要らない。
AIであれば、瞬時に正答を用意できるが、当たり障りのない<言葉>で表現していることもある。
正答が、真の正解とは限らない。
嘘でもいいから、言ってほしくない言葉が数多く存在する。
人間であるから、そのハンドリングが可能…。
<嘘>を巧みに操り、人を欺く言葉だけの営業マン…○×詐欺師のようなAIは不要…。
最後の障壁である<人間らしさ>の存在感も同様
情報処理能力は長けていても、血の通った<人間性らしさ>を身につける…。
AIは人間の存在感をいかに表現するのだろうか…
人生は喪失体験の、不完全な連続体。
そこに<孤独>が宿りやすい。
喪失や孤独は至る所に生息している。
人間は必ず死を迎え、そして死ぬ。
周囲の人間は、ようやく存在感に気付き、喪失感を味わう。
生存しているときは、その存在感に気付かない。
すでにカウンセリングができるAIが存在すると聞く。
AIカウンセラーならば、悲しみが溢れんばかりの人に「あなたのそばにいつもいます」という答えを導き出すかもしれない。
それで満足できる…。
もしできるなら<人間らしさ>に問題がある。
注意散漫でミスが多い■○障害の人たちはとても生きづらい。
が、不完全で多少のミスがないと<人間らしさ>がない。
ミスが多過ぎれば、仕事上支障を来す。
どっちも困る…中庸の世界。
最近、面白い現象がやたら目につく。
注意散漫でミスが多い■○障害の人たちのなかに、巧みにAIを使い、補っている人が混在している。
もしかすれば、■○障害の人たちに必須のSpecialなAIが誕生するかもしれない。
周囲が見える女性よりも、見えない女性のほうがいいという男性が意外に存在する。
多くの男性は見え過ぎる女性を嫌う。
AI全盛時代を迎える現代に逆行する、一部の男性に隠された本音。
<家庭内で余計な文句を言わない、天然系の明るい母親なら、それが最高の幸せ…>。
ほどよく見えない女性は、われわれ男性には精神的に快適…仕事が終われば、心のやすらぎを求める。
適度な沈黙は貴重…。
そういう女性の方がより可愛く見える。
AIのような迅速性、正確性が、仇になるから面白い。
そもそもAIを知らない私が、AIを論じる資格はない。
何十年、精神科医をやっているの?と言われそう…。
AIの情報処理能力は、すでに人間越えを成し遂げているが、<人間らしさ>はこれから…心からそう願いたい。
以上の障壁を越えれば、人類が人類でなくなり、<人間らしさ>を身に付けたAIが、人間にとって代わる時代…人類の終焉の日もそう遠くない。