

第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
第二十七話 Stay Cool SpecialのBackyard
第二十八話 再び蘇る
第二十九話 風鈴
第三十話 喪失が教えてくれるもの
第三十話 Don’t Miss It
気が付けば、11月…。
表参道には、寒さを全然感じないTシャツ姿の人も入れば、正反対に感じやすいダウン姿の人もいる。

まるで南国に住む人と北の大地の人が行き交っているようだ。
今しか観る事の出来ない眺め。
何気ない景色であるとしても…。
ようやく秋らしい涼しさを感じ取れるようになった。
今度は、冬が手ぐすねを引いて待っている。
もうすぐ<冬>の到来…季節が駆け足で過ぎていく。
季節が変わるように、世界もまた変わっていく。
医学の進歩もそのひとつ。

2025年、○×さんらが、ノーベル賞の生理学・医学賞を受賞。
その内容は、1995年に発見した<制御性T細胞>に関するもの。
その細胞は、人の身体の免疫機能を調整できる能力を持つ。
サッカーで例えるなら、まさしく心臓部…ボランチであり、バランサーの役割を担う。
最も重要なポジションのひとつ。
他の免疫細胞の働きにブレーキを効かせる<制御性T細胞>が十分に機能したとすれば、人の免疫機能は弱まる。
制御性T細胞のブレーキが利きすぎれば、誰が喜ぶ?
人の免疫機能が落ちれば、がん細胞の天下である。
がん細胞が活発化し、増殖しやすくなる。
正反対に、ブレーキが十分に機能しないとすれば…。
結果、自分で自分自身を攻撃してしまう。
それが、様々な自己免疫疾患。
免疫機能は本来、自分自身を守るために存在する。
が、自分自身を攻撃するという想定外の逆の流れが生じる。
わかりやすく言えば、<謀反>であり、近衛兵が主君を裏切る<本能寺の変>のようなもの。
攻撃はできても守りは苦手…守りは鉄壁でも攻撃力は弱い。
どちらかに偏る嫌いがある。
がんに陥りやすくなるか、自己免疫疾患で悩むか…。

もしバランサーとして、状況に応じて、攻守いずれにも十分に機能できるように改変できれば、がん細胞の増殖を抑え、そして自己免疫疾患を引き起こさない。
求められるのは、変幻自在に動けるかどうか?
攻守の要のバランサーとしての、ハンドリングの妙…。
免疫機能の調節を介して、自己免疫疾患の治療とがん治療が繋がる。
臨床応用できれば、<凄い>ことになる。
そう遠くない時代…。
一昔前までは、誰一人として<考えもつかない>発想…。
免疫が、遠く離れた二つの世界をつなぐ。
さまざまな病が治るようになれば、今まで以上に人が長生きできるようになる。
とても好ましいと思える反面、認知や介護などの諸問題が、これまで以上にクローズアップされる。

ある難題が解決したとしても、次から次へと襲って来る新しい難題…。
すでにやってきている…渦中に巻き込まれていく人が増える。
加齢とともに心身の綻びは隠せない。
冬の到来を思わせる、冷え切った秋風が身に染みる。
沈みゆく世の中でいかに生きるか…。
長く生きれば生きるほど、味わう必要性のない、苦しみをより強く感じることもあるかもしれない。
家族の認知ができない…新しく覚えることができない…最後に昔の出来事も消えていく。
が、決して悪いことばかりではない。
いいこともある。
歳を取れば、年齢相応の皺ができる。
楽しい思い出も消えてなくなるかもしれないが、忘れたくても忘れられない嫌なことも消えていく。
憎んでいた出来事が、ある日を境として、嘘のように消えてなくなる。
完全になくなることはないとしても、
家族は、顔の皺が微妙に減ったような錯覚を瞬間的に起こす。
憎しみが少しでも消えれば、いい<笑顔>が新たに生まれる。

その瞬間こそが、重要な鍵を握っている。
最後の瞬間だから尚更…最後の<笑顔>を見逃してはいけない。
だからこそ、タイトルは<Don’t Miss It(見過ごさないように)>。
数十年前に<ベンジャミンバトン>というどんどん若返り、最後は赤ん坊になるという映画があった。
時間軸には<交差点のようなもの>が存在する。
言い換えれば、運命的な出会いである。
生きていれば、その類の出会いのひとつや二つは必ず存在する。
その一瞬の出会いのタイミングを逸してしまわないように、ほんの一瞬のように思える瞬時の出来事であっても、大切に生きていく…。

最後の笑顔も同じ。
最後の瞬間だからこそ、Don’t Miss It…。
たとえ、見過ごしたと思っても、過去の映像を探せば、心の片隅に隠れていることもある。