南青山アンティーク通りクリニック

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第三十一話 Don’t Miss It

令和七年十一月二十一日(金曜日)


街並み

気が付けば、11月…。
 表参道には、寒さを全然感じないTシャツ姿の人も入れば、正反対に感じやすいダウン姿の人もいる。

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 まるで南国に住む人と北の大地の人が行き交っているようだ。

今しかない

 今しか観る事の出来ない眺め。
何気ない景色であるとしても…。

移り変わり

 ようやく秋らしい涼しさを感じ取れるようになった。
 今度は、冬が手ぐすねを引いて待っている。
 もうすぐ<冬>の到来…季節が駆け足で過ぎていく。

バランサー

 季節が変わるように、世界もまた変わっていく。
 医学の進歩もそのひとつ。

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 2025年、○×さんらが、ノーベル賞の生理学・医学賞を受賞。
 その内容は、1995年に発見した<制御性T細胞>に関するもの。
 その細胞は、人の身体の免疫機能を調整できる能力を持つ。
 サッカーで例えるなら、まさしく心臓部…ボランチであり、バランサーの役割を担う。
 最も重要なポジションのひとつ。

ブレーキング

 他の免疫細胞の働きにブレーキを効かせる<制御性T細胞>が十分に機能したとすれば、人の免疫機能は弱まる。

がん細胞の喜び

 制御性T細胞のブレーキが利きすぎれば、誰が喜ぶ?
 人の免疫機能が落ちれば、がん細胞の天下である。
 がん細胞が活発化し、増殖しやすくなる。

本能寺の変

 正反対に、ブレーキが十分に機能しないとすれば…。
 結果、自分で自分自身を攻撃してしまう。
 それが、様々な自己免疫疾患。
 免疫機能は本来、自分自身を守るために存在する。
 が、自分自身を攻撃するという想定外の逆の流れが生じる。
 わかりやすく言えば、<謀反>であり、近衛兵が主君を裏切る<本能寺の変>のようなもの。

偏り

 攻撃はできても守りは苦手…守りは鉄壁でも攻撃力は弱い。
 どちらかに偏る嫌いがある。
 がんに陥りやすくなるか、自己免疫疾患で悩むか…。

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変幻自在

 もしバランサーとして、状況に応じて、攻守いずれにも十分に機能できるように改変できれば、がん細胞の増殖を抑え、そして自己免疫疾患を引き起こさない。
 求められるのは、変幻自在に動けるかどうか?

ハンドリングの妙

 攻守の要のバランサーとしての、ハンドリングの妙…。
 免疫機能の調節を介して、自己免疫疾患の治療とがん治療が繋がる。

遠くない未来

 臨床応用できれば、<凄い>ことになる。
 そう遠くない時代…。

考えもつかない

 一昔前までは、誰一人として<考えもつかない>発想…。
 免疫が、遠く離れた二つの世界をつなぐ。

クローズアップ

 さまざまな病が治るようになれば、今まで以上に人が長生きできるようになる。
 とても好ましいと思える反面、認知や介護などの諸問題が、これまで以上にクローズアップされる。

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難題

 ある難題が解決したとしても、次から次へと襲って来る新しい難題…。
 すでにやってきている…渦中に巻き込まれていく人が増える。

綻び

 加齢とともに心身の綻びは隠せない。
 冬の到来を思わせる、冷え切った秋風が身に染みる。
 沈みゆく世の中でいかに生きるか…。
 長く生きれば生きるほど、味わう必要性のない、苦しみをより強く感じることもあるかもしれない。

消え去る

 家族の認知ができない…新しく覚えることができない…最後に昔の出来事も消えていく。
 が、決して悪いことばかりではない。
 いいこともある。

その一方で、嫌なことも消えていく

 歳を取れば、年齢相応の皺ができる。
 楽しい思い出も消えてなくなるかもしれないが、忘れたくても忘れられない嫌なことも消えていく。

錯覚

 憎んでいた出来事が、ある日を境として、嘘のように消えてなくなる。
 完全になくなることはないとしても、
 家族は、顔の皺が微妙に減ったような錯覚を瞬間的に起こす。
 憎しみが少しでも消えれば、いい<笑顔>が新たに生まれる。

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最後の笑顔

 その瞬間こそが、重要な鍵を握っている。
 最後の瞬間だから尚更…最後の<笑顔>を見逃してはいけない。
 だからこそ、タイトルは<Don’t Miss It(見過ごさないように)>。

ベンジャミンバトン

 数十年前に<ベンジャミンバトン>というどんどん若返り、最後は赤ん坊になるという映画があった。

交差点

 時間軸には<交差点のようなもの>が存在する。
 言い換えれば、運命的な出会いである。
 生きていれば、その類の出会いのひとつや二つは必ず存在する。
 その一瞬の出会いのタイミングを逸してしまわないように、ほんの一瞬のように思える瞬時の出来事であっても、大切に生きていく…。

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ファイナル

 最後の笑顔も同じ。
 最後の瞬間だからこそ、Don’t Miss It…。
 たとえ、見過ごしたと思っても、過去の映像を探せば、心の片隅に隠れていることもある。