南青山アンティーク通りクリニック

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第三十話 喪失が教えてくれるもの 

―いつもの風景より―

令和七年十月二十五日(土曜日)


いつものホテル

 帰省…。
 瀬戸内海を一望できる<いつものホテル>に数泊。

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スカイバー

 時間に余裕があったので、高層階のスカイバーに立ち寄った。
 バーカウンターから瀬戸内海を見渡すことができる。

サンセット直前

 確か夕方6時前後。
 辺りが薄暗くなる直前。
 徐々にサンセットに入っていく。

美しく映える

波ひとつ立たない穏やかで静寂な、瀬戸内海が眼前にあり、その後方には、瀬戸内海に浮かぶ小島が、バランスよく、いいアクセントとして、いくつも並んでいる。
しかも、サンセットの影響で、海面がとても優雅に、と思えば、ときに妖しく光り輝き、非常に美しく映える。

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錯綜

 ある葛藤が心の中で錯綜する。

 「最高級クラスの景観が目前にある…」
 それと同時に「今、どうして雑踏の東京にいる…仕事には適しているが…」

いつもの風景

幼い頃から、最高レベルの眺望とは露とも知らず、当たり前の<いつもの風景>と思い込んでいたことに気が付いていなかった。

 美しいものを素直に美しいと思えないことがある。
首都圏で綺麗、美しいと感じる景観に巡り合うことはそうそうない…。
巡り合っていたとしても、心には全然響かない。

あまりにも遅過ぎる

 今頃になって、ようやく気付いた…あまりにも遅すぎる。

ゆらゆら揺れる

 が、冷静に考えてみると首都圏で長年生活したからこそ、瀬戸内海の夕景の良さを実感できるようになった。
 <人疲れ>するムラ社会に住み続けていれば、その良さに気付かないまま…。

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瀬戸内海に浮かぶ小島をバックに海面がゆらゆら揺れながら、夕日が徐々に沈み、空と海が溶け合い、辺りは真っ暗になる。

慣れ

 慣れは、人の感動を鈍らせ、とても大きな妨げになることがある。
 それでも記憶に刻まれた風景は、時を経ても色あせない。
 そして、数年前のサンセットの美しさは、そのときにしっかりと目に焼き付けたので、いつでも思い起こせる。

価値ある喪失感

今さらながら、喪失は価値あるものと感じさせられる。
 失って初めてわかる喪失…失わないとわからない喪失。
 喪失の波は突然やってきて消えていく。
襲って来る喪失は、生きるために欠かせない。

最初で最後

 数年前の瞬間的な感動は、その一瞬が<最初で最後>。
もはや二度と味わうことができないことは、十分過ぎるほどわかっている。

タイミング

 最近、瀬戸内海を見渡せる、古代ギリシャの円形コロシアムをモデルにした、野外音楽広場ができたと聞く。
 タイミングさえあえば…。

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住めば、都

今を離れる気持ちはない…住み慣れれば、その土地は<都>になる。

変化

 それでも人は変化を恐れながら、変化の中でしか、新しい<いつもの風景>を見つけられない…。