

第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
第二十七話 Stay Cool SpecialのBackyard
第二十八話 再び蘇る
第二十九話 風鈴
第三十話 喪失が教えてくれるもの
第三十一話 Don't Miss It
第三十二話 MERRY CHRISTMAS
第三十三話 年賀状じまい
第三十四話 余白
第三十五話 SAKURA
第三十六話 布石
第三十七話 獅子落とし
第三十八話 黄昏
第三十九話 物語
第四十話 言葉になる前の無意識
第四十一話 檻と見えない首輪
第四十二話 構造
朝の光が、毎日同じ角度で机の端に落ちていた。
その淡い光の中で鏡に映る自分は、どこか頼りなく、翼をたたんだまま空を知らない小さな鳥のように見えた。

自分が自由だと信じていた。
けれど、いざ飛び立とうとすると、何かにぶつかる。
透明な壁らしきものに何度も何度も。
飛んでいるつもりで、実は部屋の中を旋回していただけだった。
壁があり、天井があり、扉の見えない部屋。
その気づきは静かに訪れた。
ある朝、胸の内側を冷たい指先でそっと触れられたような感覚が走り理解した。
私は檻の中で生きていた。
その檻の格子は見えなかった。
それを認識した瞬間、呼吸が浅くなった。
自分が信じていた自由は、もっとも巧妙な幻だった。
部屋の広さを、世界の広さと勘違いしていた。
自分の立ち位置を知ったとき、 私は心の底から震えた。
生まれて出会った嵐のように。
その瞬間から、静かな闘いが始まった。
出口を探す日々。
見たことのない空を、どこかで確かに感じている空を、求めるようになった。
扉がどこにあるのかさえ分からなかった。
檻を出た瞬間、風の匂いが変わった。
乾いた空気が肺の奥まで流れ込み、世界を知り、自由になったと思った。
けれど、その自由は思っていたよりずっと冷たかった。
この新しい街では、誰も私の名前を知らない。
自分の存在は、ただの音に溶けていった。
広がる静けさの中で、首の後ろにかすかな引きつれを感じた。
見えない首輪が、まだそこにあった。
文化、言葉、恐れ、そしてかつての自分の影…過去から伸びる細い糸が、私をそっと引き戻していた。
それを断ち切ることは、血を流すよりも痛みを伴う。
誰も受け止めてくれない場所で、 ひとりで立つ覚悟を求められる。
そしてようやく自由を掴んだときに気づいた。
自由はゴールではない。
スタート地点に過ぎない。

目の前には巨大な壁。
誰にも縛られないのなら、その壁を乗り越えないといけない。
結果、本当の自由に届くかもしれない。
けれど、その自由が幸福を保証するわけではない。
風は冷たかった。
鳥は、しばらく飛び続けた。
それから、戻る枝を探した。
鳥にだって、戻る枝が必要だ。
だからこそ、寄りかかれる場所、小さな避難所、自分で選んだ優しい檻が、ときに必要になる。
過度にストイックな自由は、人を壊してしまう。
自由とは、ただ飛ぶことではない。
安全に降り立てる場所も知っている。

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