

第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
第二十七話 Stay Cool SpecialのBackyard
第二十八話 再び蘇る
第二十九話 風鈴
第三十話 喪失が教えてくれるもの
第三十一話 Don't Miss It
第三十二話 MERRY CHRISTMAS
第三十三話 年賀状じまい
第三十四話 余白
第三十五話 SAKURA
第三十六話 布石
第三十七話 獅子落とし
第三十八話 黄昏
四半世紀以上、四半世紀未満。
プロペラ機で空を駆けていた頃。
羽田空港からわずか一時間のフライト。

滑走路付近には、今は滅多に見ることのないタラップ車が目に留まる。
そのタラップに足を載せた時、
身体中の張りつめていたものが、ほぐれ始めた。

金属の感触が、靴底から伝わる。
一段降りるごとに、身体の力が抜けていく。
地上をしっかりと踏みしめた時、すべてが解き放たれる。
適当な言葉が見つからない。
そのとき初めて気づく。
それは、どこから来ていたのかわからない。
身体の奥底に隠れていたのか、全然気が付かなかった。
懐かしい空気の流れ、匂い、湿り気がわずかに感じ取れる。
今感じたと思った黄昏の感覚は、肌を優しく撫でる。
ほんの一瞬。
山間に沈みつつある夕暮れが、微笑みかけてくる。
ようこそとつぶやきながら。
が、その言葉が、微風に乗って消え去る。

数日後、再び張りつめた世界に戻る。
その頃には、今見ている黄昏は、しばらくの間、意識の外側に姿を隠す。
けれど、あのときの感覚だけは残っている。
喧騒の中では、なかなか経験できない。
慌ただしく過ぎ去る時間…それだけに今はとても貴重な瞬間。
近くに小さなため池があった。
小石を一つ落とすと、静かな弧だけが広がっていった。
夕暮れどきの残光に照らされて、水面の小さな波紋が藍色を帯びていった。
せつなさだけが、静かに心に残った。

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