

半世紀以上、半世紀未満の頃。
プロペラ機で空を駆けていた時代。
羽田空港からわずか一時間のフライト。

滑走路付近には、今は滅多に見ることのないタラップ車。
そのタラップに足を載せた時、
身体中の張りつめていたものが、ほぐれ始めた。

金属の感触が、靴底から伝わる。
一段降りるごとに、身体の力が抜けていく。
地上をしっかりと踏みしめた時、すべてが解き放たれる。
言葉が追いつかない。
ふと、気づく。
それは、どこから来ていたのかわからない。
身体の奥底に隠れていたのか、全然気が付かなかった。
懐かしい空気の流れ、匂い、湿り気がわずかに感じ取れる。
たそがれが、そっと肌を撫でていった。
ほんの一瞬。
山間に沈みつつある夕暮れが、微笑みかけてくる。
ようこそとつぶやきながら。
が、その言葉が、微風に乗って消え去る。

数日後、再び張りつめた世界に戻る。
その頃には、今見ている黄昏は、しばらくの間、意識の外側に姿を隠す。
けれど、あのときの感覚だけは残っている。
喧騒の中では、なかなか経験できない。
慌ただしく過ぎ去る時間…それだけに今はとても貴重な瞬間。
近くに小さなため池があった。
小石を一つ落とすと、静かな弧だけが広がっていった。
夕暮れどきの残光に照らされて、水面の小さな波紋が藍色を帯びていった。
せつなさだけが、静かに心に残った。

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