第一話 幻月
第二話 さらなる<偶然性>と見えていなかった<必然性>
第三話 ちょっぴり早い、クリスマスイブ ―深紅のバラ―
第四話 雪化粧
第五話 お帰りやす
第六話 生演奏
第七話 You Can Do Magic
第八話 Last Train
第九話 美しく流れるメロディライン
第十話 結婚するって本当ですか?
第十一話 Antonym『アントニム』
第十二話 魑魅魍魎
第十三話 俯瞰
第十四話 陶酔
第十五話 ダブル・・・
第十六話 Survive(生き抜く)
第十七話 絶体絶命
第十八話 Out Of Control & Take My Breath Awa
第十九話 I Cannot Die
第二十話 乱高下
第二十一話 STORIES
第二十二話 Brain Jack
第二十三話 人間らしさ…Into the Conflict
第二十四話 影
第二十五話 Lock On
第二十六話 黒子という名の主役
<死にたいほど辛い>と涙ながらに訴える人は多い。
その一方で、死にたいほど辛いが、必死に耐え忍び、凛とした表情で、何事もなかったかのように我慢している人も決して少なくない。
前者の人たちは言葉として心をさらけ出すことができる…言語化し、周囲の同情や共感を得ることも可能である。
が、後者の人たちは、余程のことでもない限り、言語化しない。周囲の人たちは彼らの真意を汲み取ることはそう簡単にできない…正反対に、幸せそうに見えることさえもある。
ネットである言葉を見つけた。
<生きることの大変さ>という言葉。
比喩として<地獄に落ちる>よりも<生き抜くことのほうがどれだけ大変か>。
休みの日は、嬉しくてたまらない。
前夜の夕方に、その週の診療がすべて終わると「ようやく今週も無事終了…」とほっと胸をなでおろす。
休みの日の朝八、九時頃になれば、朝日を浴びて身体が徐々に温まってくる。
近くのコンビニに行って、五、六種類の新聞をまとめて買ってくる。
○本経×新聞に始まり、多種多様の領域の新聞。
数分ですべての新聞の概要にさっと目を通す。
その後、興味ありそうな記事をピックアップし、ゆっくりと時間をかけて読む。
カメラで例えるなら、カメラのレンズのフォーカスを絞るような感じ…。
スマホのように最初から焦点を絞ってしまっているものはちょっと…自由を奪われた感覚を持ってしまう。
思いつくままに、読みたい所を探し、そこを起点にして読んでいく。
心に印象を残す記事は必ず幾つかある。
その多くは、何年もかけて取材を続け、やっとの思いで完成した記事である。
<汗>を搔いたかどうかに尽きる…一本の記事を書くためにいかに労力をかけてきたのかと思うと、心より頭が下がる。
ロシアとウクライナの紛争について、現地在住の○本経×新聞の新聞記者が紙面約一ページに渡って、赤裸々に書かれた記事を見つけた。
その記事によれば、ロシア兵のなかには、受刑者の人たちが多く含まれているという。
彼らのなかには政府と契約し、紛争の中にやってきている人が含まれている。
日本でも大きな話題になり、数人に一人は知っていると思う。
今は、戦国時代ではない。
好きで人を殺す人はいない。
それでも殺人兵器として、紛争地に送り込まれる。
彼らのなかには、怖くて逃げだしたいと思う人が多く混じっているという。
が、それができないので、恐怖に満ちた日々を送っていると強く訴えている。
人を殺したくない、殺してはいけないという激しい葛藤や強い恐怖を感じながら、気が付くと人を殺している…。
記事に対する意見はさまざまなものがあり、十人十色。
取材された記者の方々は、真実を伝えるために、想像を絶する必死の思いをしているのではないかと思う。
<ご苦労様>としか言いようがない…<お疲れ様です…ちゃんと読んでいます>と返事をしたい。
ねぎらう適切な言葉が、私には思い浮かばない。
次第に夕日が沈んできた。
一日が終わるのがとても早い…流れが単調になってしまっていることの証左。
朝目覚めると、今日も診療。
暖かく温もっている布団から出たくない…一日中寝ていたいと思う。
が、そうはいかない。
心身の調子が多少悪くても、言い訳はできない。
気がつくと、診察室の椅子に座っている。
ある知人から<死ぬまで現役、執筆活動を続け、いい作品を創る>というメールが届いた。
たった一言であるが、大いに勇気づけられた。
人生最後の舵取りは決まった…。
楽な思いをするためのセカンドライフはしない…。
絶えず攻撃的に…守りに入りたくない。
守りに入れば、人間はより慎重になる。それで終わればいいが、「最後まで守り抜かないといけない」と焦る。精神的に委縮している自分に気付くこともあるかもしれない。その瞬間が最も危険であり、これほど弱くて脆いものはない…ほんの小さい穴であったとしてもあっという間に広がり、ズタズタに引き裂かれ、そのまま崩れていく。
最後の一人まで見届ける…それまで息絶えることができない。
力尽きて、結果的に<大嘘つき>にならないとも限らない。
その可能性の方が数段高い。
十年後、二十年後も同じことを言っているかもしれない…。
貴重なアドバイスをいただける人がいるだけでも幸せと思わないといけない。
令和六年も無事終え、晴れやかな新年を迎えることができそうである。