南青山アンティーク通りクリニック

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第四十五話 もう一人の私


― Stranger ―

令和八年七月三日(金曜日)


哀しみの中で、完璧に演じ切れる彼女は、光り輝く存在であった。
が、心の奥底には、言葉にできない哀しみが絶えず横たわっていた。

白衣を脱げば、誰もが振り返る存在だった。
それでも、鏡を見るたびに、幼い頃の少女が消えることはなかった。

彼女はいつも寂しい眼をしていた。
周囲の人は彼女の哀しみを想定できない。

職場は大奥で、女性の序列社会。
とても厳しいが、実力主義には程遠い世界。

そこに激しい怒りを感じていたが、にこやかな表現に終始する。
こういう人生が死を迎えるまで続くと思うといたたまれない。

独立して、自分の思う医療を行いたい。
彼女はとても人気のある女医。
決断を下せば、実現できる。
それでも、躊躇してしまう



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あるとき、目の前にいたのは、幼い頃の私だった。
その少女の気持ちは痛いほどわかる。
誰も知らない街で、生き直したい。
例えば、ニューヨーク、パリ、LAなど。

顔を変えることも、街を変えることも、今の時代ならできる。

彼女は、その女の子の気持ちがわかるが、回答はどれが正解なのかわからない。
女の子との質問には、お茶を濁す言葉しか返せない。

私なら渡米する。 それを言葉にしようと思うが、もう一人の私は制止する。

少女の背中を見送った。
救われたのは、少女だけではなかった。
助言できない言葉を、最後まで私は口にできなかった。