

幼い頃、その女の子は気づいた。
自分の思いのたけを口にすると、
多くの人を傷つけてしまうのだと。
何を言っても、
たとえ正しいことを言っても、
最後に責任を負うのは自分だということを。
そのときの傷つきがあまりにも大きすぎた。
彼女は決めた。
どんなに思われても構わない、心の鎧をまとおう、と。
父親の仕事の出張にくっついて、米国東海岸を旅したことがある。
ボストンからAmtrackで北上した。
二十分ほどで着いたのは、魔女の街、セーラム。
そこで、お土産としてペルソナを買ってもらった。
英語で書かれたペルソナの説明を眺めていると、
父は笑いながら言った。
「この仮面には、不思議な力があるらしい。
心の奥に何を抱えていても、すべて、人を癒やす言葉に変えてくれるそうだ。」

それ以来、その少女の心は静かに変貌した。
彼女がその場にいれば、空気は優しく癒される。
幼い頃、周囲の人を傷つけて怯える彼女は、もうどこにもいない。
何を言われても
微動だにしない人間を完璧に演じることができる。
それでも、
彼女の笑顔の奥に隠された、真の意味を理解できる人は、
――ほんの、わずかしかいない。
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